東京地方裁判所 昭和46年(ワ)1572号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一(事故の発生)
本件事故の発生に関する請求原因第一項の事実は、原告の受傷の部位、程度の点を除いて当事者間に争いがない。そこで、まず、原告の傷害の部位、程度について判断する。
<証拠>を総合すれば、原告は本件事故により左大腿骨骨折および左下腿挫傷・擦過創の傷害を負わされ鈴木病院に事故当日から昭和四五年六月一八日まで二三日間入院して治療を受け、退院後もギブス装置のまま同年八月中旬まで自宅にて療養し、ギブス除去後約二週間位で漸く歩行可能となり、同年一〇月七日通院を終了したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。
二(被告の責任)
(一) 運行供用者責任
被告が加害車を所有していたことは、当事者間に争いがなく、反証のない本件においては被告が加害車の運行供用者であつたものと推認される。
(二) 免責の成否
そこで、被告の免責の主張につき判断する。
<証拠>によれば、本件事故現場付近は、幅員が僅か4.15メートルで歩車道の区別がなく自動車の交通量の少い、人家や児童公園が並ぶ、曲折のある市街地道路であること、被告の進路前方左側には車幅約二メートルの普通貨物自動車が駐車していて同方向の視界を遮断しており、また、そのすぐ左前方には桜台児童遊園があつて、そこから子供等が出て来ることは充分予測されること、したがつて、加害車の運転者である被告としては、右駐車中の自動車の右側を通過するに際しては減速、徐行するとともに、とくに前方に対しては充分な注意を払う義務があるものというべきところ、被告は慢然と加害車を時速約二〇キロメートルで進行させたうえ、左前方の充分な安全確認を怠つたため、駐車中の自動車の前方の前記児童遊園の方から加害車の進路直近に出てきた原告に気付かず、加害車を衝突させて転倒させたことが認められる。してみると、被告の無過失の主張は認められないから、被告の免責の抗弁は、爾余の点について判断するまでもなく失当である。
三(損害)<中略>
(二) 過失相殺
<証拠>によれば、原告は本件事故当時三才五カ月であつたことが認められるから、原告本人にはいまだ事理弁識能力があつたものということができず、その過失を問うことはできない。
しかしながら、原告法定代理人の本人尋問の結果によると、原告の親権者である父、母は、常日頃原告に対し道路を横断するとき注意するように云いつけてはいたものの、当日原告を、九才の姉と二人きりで自宅から約一五〇メートルも離れた前記児童遊園へ遊びに行かせたことが認められるから、原告の親権者らにも、未だ事理弁識能力のない原告を監護者も付けずに外出させた過失があるものというべきである。そしてこのような過失は原告側の過失として原告の損害賠償額の算定に当り斟酌すべきところ、前記二の被告の過失、本件事故態様等を合せ考えると、原告の前記財産的損害について四割の過失相殺をするのを相当と考える。
したがつて、原告の前記(一)の財産的損害は、過失相殺の結果、金一〇万一五九八円となる。 (加藤和夫)